食べ物の興味は尽きることがない。

先日、今川焼きを食べた際に、ふとしたことを思い出した。



小学生ぐらいのときに、悩んだことがある。今川焼きって何?大判焼って何?と。


大抵の子供は、「たい焼き」からスタートしたのではないか。少なくても私は「泳げたい焼き君」の時代にちょうど幼少時代で、そのブームとともに育ったのでどうしても「今川焼き」や「大判焼」が何か、判らなかったのである。



で、食べてみて、たい焼きとどこが違うのか判らなかったのだ。

時は流れ、この間ふとしたことで今川焼きにであった。そこで、今の時代は調べたいと思うとすぐに調べられる世の中なわけで、この疑問を色々調べてまわった。


どうも、たい焼きは、本来「今川焼き」のようだ。よく見れば、ただたんに丸い形がつまらなく、それをお祝い等のめでたさにひっかけて、鯛の形にしただけと、今になっては解釈できる。



今川焼は、江戸時代、1780年ごろ、東京の神田、今の千代田区神田鍛冶町1丁目と中央区日本橋室町4丁目を結んでいた橋(今川橋:現在は交差点として残っているようだ)の辺りに出ていた露店販売のお菓子がルーツのようだ。


江戸の末期に、小麦粉をベースに凹凸の鉄板であんこをはさんで焼いた駄菓子として、全国に広がったようだ。当然広まると亜種が登場する。それが大判焼であり、たい焼きであるということなのだ。

この今川焼き、似たような物として、もみじ饅頭がある。こちらは明治になってから、広島から出てきたようだ。



さて、これらが「たい焼き」へと発展していくわけだが、その登場はもっと遅く、1909年になってからである。

たい焼きは、港区麻布十番「浪花屋総本店」さんが創りだしたもののようだ。

当時のたい焼きそのまんま伝えている感じがする。今では、今川焼きも、たい焼きも中にあんこがギッシリで、種類も豊富。あんこの代わりにクリーム、チョコ、と様々だ。

たい焼きも例外ではなく、北海道富良野の方には、「ハム」が挟まっているたい焼きもあるらしいい(苦笑)



さて、この期、地方に行くに従って、色々と呼び名が変わっていく。大判焼、二重焼、回転焼、太鼓饅等々。どれも聞いたことのあるような無いような、そんな感じだろうと思う。うちは「二重焼」だった、という人も居るだろう。

それぞれで呼び名があったと思う。



インターネットを駆け巡ると、実に驚かされることがある。今回は、この大判焼・・・というより今川焼きの地方での呼び名の分布図を作成しているページを発見した(→こちら)。


こちらでは、お店情報のほかに、ルーツについてもかなり詳しく調査している様子だ。なんでも回転焼を少し大きくしたところから大判焼が生まれ、かつ小判大判をイメージしているとか、なるほど、色々考えてみると奥が深い。また、関東に今川焼が多く、回転焼は関西方面に多いようだ。九州まで行くと回転焼きが一般的らしい。が、一般的に 大判焼きが全国的に広まっている名前のようだ。二重焼は中国地方だけの呼び方のようである。

さて、たい焼きといえば、知らない人が居ないと思うほど有名な歌、それが「およげ!たい焼きくん」だが、なんと、そのモデルになった店は、ルーツの浪花屋総本店のようだ。つまり、裏を返せば、売り上げ貢献のために「歌を利用したか」、逆に「唄を売るために売り上げのあるオリジナル店を利用したか」のどちらかということになる。


なにげなしにヒットした唄でも、作った側には意図があったはずである。

そういえば、団子の唄も、お魚の唄も、みんなポニーキャニオンから出ているような気がする。もっともお魚の場合は後から販売権を争ったというので単なる偶然かもしれないが、子供に人気のある食べ物を唄にしてヒットさせるというやり方は、意外に良い戦略だ。

例えばポッキーなんかは、昔からアイドルを指示する世代(=子供中心)をターゲットにCMを出していたような気がする。アイドルが食べている製品ということで、無意識にそれらを指示する世代に浸透させるイメージとでもいおうか。



さて、たい焼きに話を戻そう。

実は、今川焼きよりも、たい焼きのほうが奥が深いと感じている。私は尻尾まであんこが入っていないほうが、後の口直しにも使えて好きだが、その部分の生地の扱い方や、今川焼きよりも必然的に薄くなる生地の焼き方や、鉄板に対する設置面積の多さの分「パリっとした」感触が生まれる分、慎重に焼かないと焦がしてしまう。

そういう意味で、美味しいたい焼きがたまに食べたくなる。



でも、甘いのは嫌だ。甘くないあんこで、尻尾まで入っていなくて、皮が薄いやつでパリっとしたの、これが食いたい。

たい焼きは、個人の味の好みをもろに左右する食べ物でもあり、気にしない人はあまり食べない人なのかもしれない。

昔は結構食べたと思うんだけど、最近は全然食べないなぁ。歌の効果もあまり長くは続かないのかな。団子はもう見かけなくなってきたし。

そう考えると、歌は無闇に使って欲しくないなぁ。


でも、伝統的な食べ物が、今後どうなっていくかは興味深い。日本人の味覚はここ数十年で大きく変わっているような気がするから。例えば、私が80歳まで生きたとして、そのころまでに、いったいいくつのお菓子が近くのお店で買えるのだろうか。



あぁ、結局、小さい頃の悩みはある程度解決したけど、将来にわたっても残っていてくれるといいな、たい焼き。

たまに食べると、美味しいよネ。


インターネットで注文できるけどさ、こればっかりは店頭で焼きたてを食べたいです。