TabletPC が、ついに登場しました。このPCの形は、ペンタブレット=ペンでなぞって指示を与え絵を描けるPCと一言に言いますが、PCカードやUSB、iLinkや無線LAN等の様々な技術を液晶ディスプレイに閉じ込めた技術の賜物です。

しかしながら、色々なホームページでは、このタブレットPCに対して不満的な〓それこそ潰せと言わんばかりに「欲しくない」的な話が出ています。その評価を色々見てると「高い」「片手で持つには重い」という意見が多く「なんでそんなものが必要なのか」的な感想から始まり「メーカーのお仕着せ」と言わんばかりの内容です。



私は、これらの意見を理解することはできますが、納得は行きません。どうしてこんなに便利で昔憧れたであろうPCの姿に不平や不満を「実際に使いもしないうちに」言うのか、そっちの方が理解できません。

また、これらの多くの反対的な意見が「Macユーザー」のページから出ている点もいささか気になっております。


実は、過去に同じように Newton という Apple社の製品が素晴らしい手書き認識エンジンを持ったデバイスとして世に出ました。この製品は私が思うに「遅すぎるCPU速度」と「未完成なまま追求を辞めた商品」、そしてなによりも「閉鎖的な環境」という世界で失敗に終わり消えていったのだと思っています。

おりしも、Newtonが登場したときは、日本の手書き認識PDA「ザウルス」が最高に盛り上がっていたときです。このNewtonもザウルスの発売元であるシャープ(株)からの技術提携のもとで実現していたはずです。



結局、日本語を理解できるバージョンのNewtonは日本でもっとも必要とされていた時期に提供されませんでした。今や、コンピュータにはキーボードが付き物、PDAですら手書きは必要ないと思われはじめている時代です。

そんな時代に登場する今度のタブレットPCは「タイピングではカバーしきれない複雑な文字を持つアジア圏で最も期待される」形のPCとして世に出てくるのです。


欧文ベースの国では、タイプライターで十分ですが、文字変換して文章を作るというアジアの国、特に異体字の宝庫である中国や韓国等の世界では待望の技術でしょう。

紙のように書いてそれを認識する十分なPCの速度。今となって初めて評価できそうなこの時期に、過去のしがらみを例にたとえてなんになるのでしょうか。



私は2年前にその形に憧れ、VAIO LXを購入しました。タブレットである点で PhotoShop での切り抜き作業はとても便利で、願わくば、ずっとこれを使っていきたいと思っています。

タブレット液晶の欠点を強いて言うならば、購入時のディスプレイの大きさがそのまま最後までついてまわる、ということに尽きるでしょう。そしてCPUのスピードを速くしたいと思ったら〓今まではほとんどの製品が交換不可能でしたが〓これも交換ができるように変わっていくかもしれません。


こんな夢のある形のPCでも、「ビルゲイツ氏がNewtonの失敗をネタにTabletPCを披露」なんてことをやらかして発表したのは悪かったのではないかと思っています。

Apple社〓すなわちMacユーザーの崇拝する会社をコケにした発言は良くなかったと思います。まぁ、悪い過去は、今、新しい形で消え去るという事を説明したかったのですが、そのせいかあちこちのMacユーザーはApple社の高値のPCの値段を放置しながら「TabletPCは高い。その高い機能分の価値が見いだせない」とやたら叩きに走っているような、そんな気がしてしまいます。もっとも私の妄想だと思いますが。



ちょっと、その、これからの新しい形である TabletPC なるものが、どんなイメージなのか、確認してみたいと思います。


右の写真は、富士通から発売されるであろうTabletPCのイメージPhotoなのですが、TabletPCと言われる部分は「液晶だけで動作する本体」です。その他のキーボードやマウス等はワイヤレスで使うことになります。


・・・って、はて、このイメージ、どっかで見たことがありませんか?

古くから Apple社の MacOS を扱う専門誌を読んでいた人、思い出せませんか?

今はもう手元に無いので写真での紹介ができないのですが、数年前に Apple社が提案したコンセプトモデル〓PowerBookの未来〓に、システムの構成がそっくりです。


Apple社は、自社で提示したコンセプトモデルを先にWindows陣営に作られてしまったということになります。このコンセプトモデルに関しては、既に見当たらないMaxOS専門誌「MacWorld Japan」(IDG社の 現 Graphic World 誌)という本のかなり古い・・・1996年から1998年あたりの記事のどっかにあるはずです・・・バックナンバーを手にして確認いただければお判りだと思います。・・・もしかしたら、Apple社のコンセプトモデルを本にしたAppleDesignという本にも載っているかもしれません。


今 TabletPC を批判している人たちは、この事を知らないのでしょうか。このタブレットPCというものは、昔に強烈に憧れたマシンの姿では無かったのでしょうか?

存在を知らない人ならば、仕方ないと思います。でも、マンガなどにも出てきたと思うし、人に優しいコンピュータを考えて行くと、値段が高いとか重いってのはもっと後の話で、このタブレットPCの形がどんどんと進化して軽く、薄くなっていけばいいだけのことではないでしょうか。携帯電話の進化みたいに。出はじめは満足行かない製品かもしれませんが、有機ELディスプレイなどの軽量化にプラスになる部材でどんどんと軽くて電子ペーパーのようなイメージになるやもしれません。


今回発表されている各社のTablePCでも、ついこの間発表された Apple社の iBookより軽い筐体で、PowerBookより安い値段で買えるんですよ。

確かに従来のPCを見て、それと比べれば高くなるでしょう。TabletPCを「紙の代わり」とか「デザイナーのアイテム」として考えることしかできないのであれば、紙を使えばいいじゃんという発想も仕方がありません。

出先まで重くて持ち運べない?と思う人は サブノートPCと同じぐらいの重さも持ち歩けない人なんでしょう。キーボードという古くからの文化にしがみついて新しい形を受け入れられない=学習の手間をかけたくないのでしょう。

もちろん、PDAを持ち歩くのに外づけのキーボードオプションなんて邪道ですよネ。両方併せて1kgを越えたなんてことになったらしゃれになりませんしね。


おっと、喧嘩を売るわけではありません。人には色んなスタイルがあるのですし、それぞれのターゲットに併せて多様化したPCがあっても、それはそれでいいんじゃないか、ということです。

VAIOなんかは、人それぞれの生活に合わせて多様化したシリーズを出しましたし、シーンを提示することで結果的に売れたじゃないですか。



そういえば、MicroSoft社が絡んでいるという理由なだけで頭ごなしに嫌、という人もいるでしょう。なにせ過去にApple社が挫けた方向性です。でも同じことをApple社にやらせれば・・・PowerBookにやらせれば、PowerBook1台買うのに車が買えるかもしれないのです。もしかしたら来年のPowerBookはネタが尽きてTabletPCになっているかもしれません。

そういえば、最近は Will Cypha Carに代表されるように月々の使用料+αを払うだけで車に乗れるシステムもあるぐらいなので、PowerBookの方が車よりも値段が高いかもしれませんよネ。

じゃぁ、「お前は何に使うんだよ」と言われると、実は想像できません。・・・せいぜい PhotoShop で便利につかうぐらいかもしれません。少なくても今の技術の状態では。でも、どこでもLXと同じように自分のスタイルで場所に左右されずに使えるようになる、ということだけで十分に私にとっては価値はあります。それは私のスタイルで、そういうのは色んな人が居る、でいいのではないかと思うわけです。


そして、私が描く未来のTablePCの世界は、こうです。

例えば、Newtonが実現しようとしていたデジタルアシスタンスの世界。適当に「Eat Lunch with Tanaka」と書けば自動的にスケジューラに「田中氏と昼食」と記録され、画面のどこかに「田中氏の電話番号と顔写真がポップアップ」され、何時でもTV電話かチャットができるモードになります。また、音声で「どこで食べるか決まっていますか?今の場所からだと**の駅の近くの定食屋が空いていそうです」と、検索して情報を与えてくれるといいでしょう。このようなPCの姿にまで育ったらどうでしょうか。




ほら、これは、あのApple社が提示した「Knowledge Navigator」でしょう。つまり、あのころのアツイ気持ちを、今の感情のものさしで計るのはいけないのではないか、と思えるんです。

あの頃に描いた世界は、かなり近いところに来ています。この TabletPC は、ようやく踏み出せた「ハード的な」一歩ではないでしょうか。

・・・ 私は TabletPC な VAIO SRX サイズのPC、欲しいですよ。CLIEのウイングデザインというよりは新しいZaurusのよう液晶部分がくるっと回転できるやつ。

ただし、今は現状の環境に満足しているので、これ以上のPCの台数を増やすわけにいかないですから、当分は買わないでしょう。1GBのPowerBookがようやく登場しましたが、今はまだ欲しくない。今時40万近くもかけて「新技術が無い」NotePCを買う気になれない。TabletPCを叩く前にPowerBookを叩くべきではないでしょうか。G3→G4になったとき、そして今、私からみれば全然そそる技術が無いです。



少なくても「新技術」が TabletPC にはありますよね。新技術代金として上乗せされててもいいんじゃないですか?欲しく無い人には今までと同じ選択肢があるわけだし。

未来を語りましょうよ。